地球環境の急速な悪化により、次世代によりよい地球環境を継承していくことが困難となりつつある今日、社会の持続可能な発展を図るため、企業にも市民にも地球環境への配慮が求められています。他方、経済のグローバル化は、先進国では深刻な失業問題を生み、発展途上国では児童労働等の人権侵害の問題を引き起こしております。また、わが国では、近年、企業の法令違反等の不祥事が相次ぎ、不祥事を契機として経営破綻に追い込まれる事例も見られるに至っています。これら内外にわたる多くの問題に対し、国家にその解決を求めるだけではなく、企業に対しても問題の解決を求める動きが強まっています。これらの動きを生み出している根幹には、企業が社会全体に与える影響力が増大しているという実情があり、国家と企業の役割分担意識の変容があります。そして、このような動きの背後には、企業を取り巻く多様なステークホルダーの要求があります。
そこで、わが国の企業にも、単に法令遵守に留まらず、企業を取り巻く様々なステークホルダーを意識しながら、社会や環境に配慮した企業活動が求められるに至っています。このような企業活動は、「企業の社会的責任(CSR)」という考え方から導かれるものです。
企業が自ら主体的にその社会的責任を果たすために行う活動は、法令遵守の徹底に役立ちますし、自社の抱える各種のリスクの割出しと解決にも資するのみならず、ステークホルダーである消費者、投資家等に対しては自社の企業価値をアピールすることにも繋がります。
これまで弁護士は、法の専門家として、主として法的紛争における当事者の代理人として、また、顧客の法的リスクを予測し、その回避・軽減を図るという予防法務にも携わってきました。しかし、CSRが法令等を前提とし、予防法務とも密接に関連するものであるにもかかわらず、これが弁護士には十分に留意されなかったため、企業の自主的取り組みのありかたや、その継続的改善について、弁護士が企業又は他のステークホルダーの立場を理解し、積極的に関わってきたとはいえない状況です。
そこで、当協会は、CSR経営の普及を通じて、経済界と法曹界をつなぎ、情報の提供、交流会の開催、セミナーの実施などにより、CSR経営の実践をサポートをすることを目的として設立されました。CSR経営をよりよく理解した弁護士が増えることによって、法曹界が持続可能な社会の実現に貢献し、弁護士と企業の協働により企業のCSR経営のよきパートナーになりうるものと自負しております。わたくしたちは、CSRの推進を通じて、わが国の企業の活力と信頼の回復に、ひいては人類のサスティナビリティ(持続可能性)の向上に貢献して参りたいと願っています。